企画展の合間をぬって、普段はあまり展示できない大振りの掛軸と無落款の屏風を正面ブースに展示しています。中でも注目に値するのが無落款の6曲1双屏風2組です。
1つは、江戸期の作と思われる「漢人・韃靼人狩猟図」屏風。江戸期はそれまでの武力一辺倒から文武両道が求められるようになった時代。一大文明を築いた漢人を文、東は中国・朝鮮から西は東欧にいたる巨大帝国を築いた韃靼人(タタール人・モンゴル人)を武の象徴として描いたものだそう。画風は雪舟の流れをくむ雲谷派に近いとのことですが、鹿に乗って逃げる猿やひっくり返った馬などコミカルなシーンも散見される面白い作品となっています。
もう1つは、「菊と鴛鴦(おしどり)図」屏風。金雲(金霧?)の間から無数の菊花と、わずかにのぞく水面にたたずむ鴛鴦の夫婦を垣間見るというような構図です。ただこの屏風が他と違うのは、菊花の“胡粉盛り”がすごいこと。胡粉(ごふん)とは貝殻を砕いた粉末で白色の顔料などに使われていましたが、この屏風では草花がことごとく胡粉で盛り上げられているのです。中心となる菊花群にいたっては数ミリほどの高さがあり、その並び連なって咲き乱れる光景は圧巻です。
これを機に、ぜひ足をお運びください。